鍼治療と柔道整復の関係について

鍼治療と柔道整復(接骨院)の違い

鍼治療と柔道整復

鍼治療と柔道整復は、いずれも国家資格を持った専門家が行う施術ですが、その内容は異なります。

鍼治療は、鍼を用いて体のツボに刺激を与えることで、自然治癒力を高めたり、病気を予防したりする方法です。

柔道整復は、柔道整復術を用いて外傷や骨格の歪みを改善する方法です。

鍼治療と柔道整復は、それぞれ異なる法律に基づいて規制されており、医業類似行為として認められています。

鍼治療とは、鍼(はり)という細い金属の棒を皮膚に刺入して、経穴(けいけつ)と呼ばれるツボを刺激することで、身体の気(き)の流れを調整し、自然治癒力を高めたり、病気を予防したりする治療法です。

柔道整復とは、柔道整復術という手技を用いて、骨折や脱臼などの外傷や、筋肉や関節などの運動器系の損傷を改善する治療法です。

鍼治療と柔道整復の違いは、以下のようになります。

  • 治療対象:鍼治療は内科的な疾患や神経系の疾患なども対象としますが、柔道整復は外傷や運動器系の疾患が主な対象です。
  • 治療方法:鍼治療は鍼や灸を用いてツボを刺激しますが、柔道整復は手技で関節や筋肉を動かしたり、固定したりします。
  • 治療効果:鍼治療は気の流れを調整して自然治癒力を高めたり、病気を予防したりしますが、柔道整復は外傷や損傷を直接的に改善したり、機能回復を促進したりします。
  • 治療時間:鍼治療は一回の施術時間が約30分から60分程度ですが、柔道整復は一回の施術時間が約10分から20分程度です。
  • 治療費:鍼治療は保険適用外で自費診療ですが、柔道整復は保険適用内で公費診療です。
  • 資格取得:鍼治療師になるには鍼灸師国家試験に合格する必要がありますが、柔道整復師になるには柔道整復師国家試験に合格する必要があります。
  • 養成期間:鍼灸師国家試験の受験資格を得るためには3年間の専門学校での学習が必要ですが、柔道整復師国家試験の受験資格を得るためには2年間の専門学校での学習が必要です。

柔道整復に保険が使える病気は、主に急性または亜急性外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれなどです。ただし、骨折や脱臼の場合は、緊急の場合を除いて、あらかじめ医師の同意が必要です。また、施術が3ヶ月を超える場合は、施術の継続が必要な理由書を提出する必要があります。

一般的に、慰安的な目的で肩こりなどの施術は、健康保険を利用することはできません。しかし、肩こりが急性又は亜急性の外傷性の症状として診断された場合は、柔道整復の保険適用が可能です。その場合は、発病年月日や外傷の原因などを明記した診断書が必要です。

急性の外傷性の症状とは、突然かつ明確な原因によって身体に損傷が生じたものです。例えば、交通事故や転倒などが該当します。

亜急性の外傷性の症状とは、反復あるいは持続される力によって、はっきりとした原因が自覚できないにも関わらず損傷が発生したものです。例えば、姿勢の悪さや過度な運動などが該当します。

ただし、厚生労働省は2020年に「亜急性の外傷」という概念は医学的に存在しないとして、柔道整復療養費の支給対象から削除しました。そのため、現在は「亜急性の外傷性の症状」を保険適用することはできません。

慢性の肩凝りは、健康保険の適用条件に当てはまらないため、柔道整復を受ける場合は自費で支払う必要があります。保険の適用条件に当てはまらない症状に対して、保険を適用して柔道整復を行うことは、保険の不正請求となります。不正請求は、法律で禁止されており、罰則があります。柔道整復師や患者の双方が責任を問われる可能性があります。慢性の腰痛も、健康保険の適用条件に当てはまらないため、柔道整復を受ける場合は自費で支払う必要があります。保険を適用して柔道整復を行うことは、不正請求となります。

慢性の肩凝りや慢性の腰痛で柔道整復に通っている人で保険が適応されている人が多いのは、不正請求をしている可能性が高いです。柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて、厚生労働省は次のように説明しています。

「単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります。」

また、保険を使えるのは、骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合であり、骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。

したがって、慢性の肩凝りや慢性の腰痛で柔道整復に通っている人で保険が適応されている人は、これらの条件に当てはまらない場合がほとんどでしょう。その場合は、不正請求とみなされます。

不正請求で摘発される柔道整復は1年間でどのくらいあるのかは、正確な統計はありませんが、厚生労働省のホームページには、不正請求等が行われた事例が掲載されています。例えば、令和2年1月から同年12月までに、東北厚生局が摘発した柔道整復師の不正請求額は、国保・後期高齢の合計で約1億3千万円に達しています。このように、不正請求は社会的にも重大な問題です。

不正請求に気が付いた場合は、厚生局や厚生支局に通報することができます。また、保険者や社会保険診療報酬支払基金にも連絡することができます。不正請求は、医療保険制度や国民の負担に悪影響を及ぼすので、早めに対処することが大切です。